現代理論は相互作用の規則を精密に与えますが、つくり方の連続像は乏しいままです。すなわち、安定粒子がどのように生まれ、なぜ安定を保ち、なぜ宇宙が安定粒子で「満ちる」のかを段階的に説明しきれていません。物語は対称性や相転移に固定されがちで、材料とプロセスの接続が欠けています。さらに多くの試みが失敗するという事実を勘定に入れません。実際には「ほとんどが失敗する」ことこそ、単発では希少でありながら全体では自然に満ちる、という両立を生む背景です。
I. 不安定は例外ではなく常態です
**エネルギー海(Energy Sea)**では、適切なゆらぎと張力の食い違いが **エネルギー糸(Energy Threads)**を局所秩序へ巻き込もうとします。試みの大半は自立窓に届かず短命です。これらの短命な秩序状態と狭義の不安定粒子をまとめて **一般不安定粒子(GUP)**と呼びます。個々は儚くても、統計的には二つの下地を形成します。すなわち 統計的張力重力(STG) によるなめらかな内向きの案内と、張力バックグラウンド雑音(TBN) による広帯域・低コヒーレンスの注入です。スケールを上げれば、この「目に見えない骨格」が、とくに高張力の地形(銀河など)で構造を曳き、磨き続けます。
II. 安定が難しい理由(条件は並列で狭い)
単発の試みが長寿の粒子へ昇格するには、狭い窓の中で複数の制約が同時に満たされねばなりません。
- 閉合:拓撲が閉じ、すぐ緩む開口を残さないこと。
- 張力配平:曲げ・ねじれ・引張の分布が自己整合的に均され、致命的な「締め過ぎ/緩み過ぎ」を作らないこと。
- 位相同期:ループ各部の内部リズムが同期し、「追いかけ合い」による自裂を避けること。
- 幾何ウィンドウ:サイズ・曲率・線密度が低損失かつ閉じた領域に入ること。小さ過ぎれば切れ、大き過ぎれば環境のせん断に裂かれます。
- 環境は閾下:周囲のせん断/雑音が新生ループの耐性閾値を下回ること。
- 欠陥の自己修復:局所欠陥が内在的自己修復で吸収できる程度に希薄であること。
- 初撃を生き延びる:最初の数拍の最強ゆさぶりを耐え、長寿軌道へ乗ること。
どれも単体では平凡ですが、並列成立が成功率を極端に下げます。ここに「粒子が希少なわけ」の物理的根があるのです。
III. 不安定背景はどれほどあるか(等価質量)
大域的な「余剰の案内」を 一般不安定粒子 の 等価質量密度 に訳すと(手法は全編で統一、詳細省略)次のようになります。
- 宇宙平均:10,000 km³ あたり 0.0218 マイクログラム。
- 天の川平均:10,000 km³ あたり 6.76 マイクログラム。
いずれも微小ですが偏在せず、宇宙網や銀河円盤に重なると「滑らかな支え」と「細やかな仕上げ」を与えます。
IV. 試みから長寿へ:流れ図
- 糸を引き出す:場/幾何/駆動がゆらぎをフィラメント状態へ延ばします。
- 束ねる:せん断帯で束ね・結合し、損失を段階的に下げます。
- 閉じる:閉合閾値を越えて拓撲ループを形成します。
- 同期する:低損失窓の内部でリズムと位相を固定します。
- 自立する:張力配平を完了し、環境ストレス試験を通過 → 安定粒子。
どこか一手でもしくじれば海へ解かれます。寿命の寄与は 統計的張力重力 へ、解体時の噴散は 張力バックグラウンド雑音 へ。
V. 桁見積もり:見える成功勘定
個々の成功は偶然でも、統計は明確な物差しを与えます(同一前提・粗い粒度)。
- 宇宙年齢:≈ 13.8 × 10⁹ 年 ≈ 4.35 × 10¹⁷ s。
- 可視物質総質量:≈ 7.96 × 10⁵¹ kg。
- 不可視物質総質量(統計的張力重力の主源):可視の ≈ 5.4 倍、≈ 4.3 × 10⁵² kg。
- 一般不安定粒子の典型寿命窓:10⁻⁴³–10⁻²⁵ s。
- 宇宙史での kg あたり擾乱回数:4.3 × 10⁶⁰–4.3 × 10⁴²。
- 安定へ「凍結」する単発成功確率:≈ 10⁻⁶²–10⁻⁴⁴。
次元つき結論:一つの安定粒子の背後には天文学的数の失敗がある。試行ごとには希少、しかし 時間 × 空間 × 並列 の三重増幅が総量を自然に積み上げます。
VI. それでも宇宙が安定粒子で「満ちる」理由
三つの増幅器が小さな成功率を巨視的な産出へ増やします。
- 空間増幅:初期宇宙には無数のコヒーレント微小領域があり、ほぼ至る所で試行が走りました。
- 時間増幅:ごく短い形成窓でも時間刻みは極密で、ほぼ絶えず試行がありました。
- 並列増幅:試行は直列ではなく並列で、同時多発でした。
それらの積で「自然な積み上がり」になります。
VII. この図からすぐ読めること
- 希少であり、同時に自然:単発は難しいが、三重増幅で総量は自然に。
- 失敗は機能:不安定背景は 統計的張力重力 と 張力バックグラウンド雑音 を生みます。
- 「見えない重力」が普遍なわけ:大域的な余剰の案内は統計的張力重力の滑らかな偏りにほかならず、多くの現象で特別な成分を要しません。
- 「標準部品」である理由:窓内で固まれば、材の制約が幾何とスペクトルを同じ規格に縛ります—電子は電子、陽子は陽子。
VIII. 要するに
- 海は失敗の海です。寿命は 統計的張力重力 に積み上がり、解体は 張力バックグラウンド雑音 を注ぎます。
- 凍結は難しいが可能です。閉合・配平・同期・幾何窓・閾下環境・自己修復・初撃生存が揃えば、長寿へ跳べます。
- 読める勘定として、等価質量、宇宙/銀河の平均、年齢–窓–試行–確率の鎖を数値で結びます。
- あらゆる安定粒子は無数の失敗が生んだ奇跡であり、十分な時間・空間・並列性があれば奇跡は日常になります—連続的で統計的かつ自己整合的な起源の物語です。
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推奨表記:著者:「Guanglin Tu」;作品:『Energy Filament Theory』;出典:energyfilament.org;ライセンス:CC BY 4.0。
初公開: 2025-11-11|現行バージョン:v5.1
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