I. 現象と疑問点
特定の金属やセラミックスを十分に冷やすと、抵抗は測定限界を下回り、電流が年単位で減衰なく巡回します。外部磁場は試料内部から押し出され、量子化された磁束管としてのみ侵入します。二つの超伝導体の間に極薄の絶縁層を挟むと、無電圧でも安定な電流が流れ、高周波を照射すると電圧に離散的な階段が現れます。
これらの指紋—零抵抗、完全反磁性(量子化侵入を伴う)、ゼロバイアス超電流、RF階段—は直感的な疑問を生みます。なぜ冷やすだけで「摩擦ゼロ」になるのか。なぜ磁場は決まった量子単位でしか入れないのか。なぜ絶縁層を挟んでも電流が流れ、マイクロ波で整然とした段差が刻まれるのか。
II. エネルギー・フィラメント理論(EFT)による見取り図:位相をそろえた電子対、散逸経路の集団遮断、障壁をまたぐコヒーレント中継
- まず対をつくり、ついで位相を縫い合わせます。
EFTでは電子を安定な単一ループの巻きとして捉え、外層がエネルギーの海(Energy Sea)と格子に結合します。冷却で格子の揺らぎが減ると、ある材料では二つの電子が逆向きの巻きで後追いしやすい「張力回廊」が生まれ、電子対が形成されます。対になると多数の散逸経路が打ち消されるか弱まります。さらに冷やすと多くの対の外層位相がそろい、試料全体を覆う**共通位相ネットワーク(位相カーペット)**が敷かれます。 - 零抵抗の理由:損失経路を集団で閉じます。
通常の抵抗は、環境へエネルギーが漏れる微小経路—不純物、フォノン、境界荒れ—に由来します。位相カーペットが敷かれると、コヒーレンスを壊す局所的な皺が生じにくくなり、損失のしきい値が急に高まります。駆動がカーペットを裂かない限り電流はエネルギーを手放さず、零抵抗として観測されます。 - 反磁性と磁束量子化の理由:位相は勝手にねじれません。
平滑さを保つため、位相カーペットは磁場に恣意的にねじられません。表面には遮蔽電流が自発し、磁場を押し戻します(マイスナー効果)。一部の材料では、磁場は細い管としてのみ許され、それぞれが位相の整数回の回り込みを要求します(磁束量子化)。各管は位相が巻き付く中空の張力コアとみなせ、互いに反発して幾何学的配列を作ります。 - ジョセフソン電流の理由:臨界近傍の細隙でのコヒーレント中継。
二つの位相カーペットを極薄の絶縁層で隔てると、間の細隙は臨界に近い状態に保たれます。ここでは両側の位相がコヒーレントに受け渡しを行い、粒子が「押し通る」のではなく、両岸の間に短い位相ブリッジが縫い付けられます。- 両側が同じ拍を保てば、ブリッジは位相を安定伝送し、無電圧で直流超電流が流れます(直流ジョセフソン)。
- 拍がずれる—直流電圧やRF駆動—と、位相差は等速に進むか外部にロックされ、ブリッジが一定リズムで超電流をポンプします。結果として交流応答や電圧階段が現れます。
- 至る所が完璧でない理由:欠陥と裂け目が損失を開きます。
大電流・強磁場・高温、あるいは量子化渦のピン止めがあると、位相カーペットは引きずられて穴が開き、そこからエネルギーが漏れます。臨界電流、損失ピーク、非線形応答が生じます。
III. 代表的な舞台
- 二つのタイプの超伝導体。
一方は磁場をほぼ完全に排除し、しきい値を超えると一気に失われます。他方は磁束管の出入りを許し、強磁場下で渦格子を組みながら導電を保ちます。いずれも「位相カーペット」が磁場のねじれをどこまで許すかの違いです。 - 超伝導リングと持続電流。
閉ループでは位相の回り込みが整数回でなければならず、裂けなければ電流は存続します。磁束を非整数に調整すると、最も近い整数に自動で飛び、離散で安定な状態が並びます。 - トンネル接合と弱結合。
極薄の細隙ではゼロバイアスでも超電流が流れ、マイクロ波下では電圧がロックされて整然とした階段を作ります。外部の拍に位相差が同期した証拠です。 - 並列リング:干渉計。
二本の「位相ブリッジ」で小リングを作ると、外部磁束によってそれぞれの位相が異なるだけ進み、超電流は磁束に対して周期的に揺らぎます。超高感度の磁束計として働きます。
IV. 観測される指紋
- 臨界温度での抵抗の急落(零抵抗)。
- 完全反磁性または磁束管の配列。
- ゼロバイアス超電流と明確な臨界電流。
- RF印加下の電圧階段(位相ロック)。
- リングでの干渉周期。
- 渦のピン止め/スリップ:欠陥は損失を減らし臨界電流を上げる一方、渦が動くと損失ピークが出ます。
V. 従来理論との整合
- 従来理論は対凝縮を巨視的な秩序変数(位相付き複素振幅)で表し、零抵抗を損失のない位相流、反磁性を位相のねじれ拒否、磁束量子化と渦を整数回の回り込み制約で説明します。
- EFTは同じ物理を、より触感のある幾何学で語ります。電子対=連れ立つ巻き、位相カーペット=試料全体の共通位相ネット、零抵抗=損失経路の集団遮断、磁束量子化=中空コアの位相欠陥、ジョセフソン効果=臨界近傍の細隙に縫う短い位相ブリッジ。現象と定量関係は一致し、EFTは「糸と海」の物語を与えるだけです。
VI. 要するに
超伝導は「電子が突然完璧になる」わけではありません。順番はこうです。まず対を作る、次に位相をロックする、最後に障壁をまたいで受け渡す。
- 弱い駆動では位相カーペットが損失を閉じ、零抵抗が現れます。
- 任意のねじれを拒むため、磁場を押し戻すか、量子化渦だけが入ります。
- 二つのカーペットの間では臨界近傍の細隙に位相ブリッジを縫い、無電圧でも輸送し、マイクロ波下では階段にロックされます。
著作権・ライセンス(CC BY 4.0)
著作権:特に断りがない限り、『Energy Filament Theory』(本文・図表・挿絵・記号・数式)の著作権は著者「Guanglin Tu」に帰属します。
ライセンス:本作品は Creative Commons 表示 4.0 国際(CC BY 4.0)で提供します。出典と著者を明示すれば、商用・非商用を問わず、複製・転載・抜粋・改変・再配布が可能です。
推奨表記:著者:「Guanglin Tu」;作品:『Energy Filament Theory』;出典:energyfilament.org;ライセンス:CC BY 4.0。
初公開: 2025-11-11|現行バージョン:v5.1
ライセンス:https://creativecommons.org/licenses/by/4.0/